高度なAIによるチャットサービスであるChatGPTの登場は大きな話題になった。
その後、勢いを増したChatGPTは、リリース後わずか2ヶ月でユーザー数が1億人を突破し、2023年には開発元のOpenAIに対して100億ドル(約1338億円)投資することが報じられるなど、期待されていることがわかる。
そして、2023年3月には、より性能が向上した「GPT-4」がリリースされた。従来のGPT-3、GPT-3.5に比べ出力精度が向上したことで、様々な企業や個人がChatGPT APIを活用しサービス開発を試みている。
ChatGPTを始めとしたAIは、予想を上回るスピードで進化を続けており、人間の仕事や雇用に影響を与えるだろう。
今までテクノロジーの進化によって、人間の仕事の役割が変わってきたように、AIの進化によって人間がやるべき仕事は変わっていくはずだ。
では、私の仕事であるプログラマーは今後どうなっていくのだろうか。
AIが発達するとプログラマーはなくなるのか
ChatGPTの登場によって、AIの進化スピードは多くの人々を驚かせた。
AIの進化は人間の生活を便利にしていく一方で、人間の仕事を奪っていくのではないかといわれている。
そんなAIによって代替されてしまう職業がプログラマーだ。ただ、本当にAIはプログラマーの仕事を奪ってしまうのか。
どうしてAIがプログラマーの仕事を奪うという説の背景
AIによってプログラマーの仕事がなくなるという背景はいくつかある。
人件費の削減
プログラマーが働くIT業界の中でもっとも費用がかかるといわれるのが人件費である。
AIによって自動でコードが生成され、ソフトウェアが開発されるようになれば、働く人間を減らすことができるわけだ。
そのため、AIによって業務を置き換えたいという思惑が生まれる。
プログラミングのコードは構造上、自動生成しやすい
プログラミングの基本は順次処理・分岐・繰り返しという単純な作業の集まりだ。そのため、将来AIによって自動化されると考えられている。
AIに条件を指定し、自動で生成できるようになればプログラマーは不要になるという考えにたどり着く。
すでに自動化している
プログラミングの自動化やソースコードの自動生成は、すでにある。
もともとプログラマーはAIによる自動化について心理的な抵抗は少ない業種といえるだろう。
ただ、まだまだ問題点は多く、結局のところ、人の目や手が必要だ。
プログラマーの仕事がなくならない理由
プログラマーの仕事は簡単になくならないはずだ。
プログラマーの仕事はコードを書くだけではない。開発したシステムが問題なく稼働するかの点検やエラー、トラブルが発生したときの保守・運用も担っている。
また、プログラマーは設計書に基づき開発を行うが、現時点だと設計書はAIには理解できない表現が多い。
複雑な処理をコードとして記述するのは難しいはずだ。人間の思考力でなければ的確に読み取ることが難しいからだ。
プログラマーは今すぐにAIに仕事を奪われることはないだろう。
生き残るプログラマーになるには
では、AIの時代に生き残るにはどうしたらいいだろうか。
常に新しい技術を取り入れる
IT業界は常に新しい技術が生まれている。
そのため、新しい技術を取り入れなければ、瞬時に取り残されてしまうだろう。常に新しい技術を吸収し、スキルアップし続けていくことが重要だ。
知識としてAIを理解しておくことは仕事で活かせるだろう。大事なのはAIに仕事を奪われる不安から学ぶのではなく、AIを利用してやろうという意識で学ぶことである。
AIが得意とするもの・不得意とするものを把握する
AIが得意とするものだけではなく、不得意なものを把握する必要がある。
例えば、複合的に知識を横断した複雑な判断や、抽象的な表現を理解することは苦手だ。
従って、これらの能力を磨くのも有効といえるだろう。
AIに関する資格を取得する
AIに関する知識を身につけるため、関連する資格を取得するというのもいいだろう。
必須となる資格はないが、資格はスキルの見える化、知識の証明という意味で取得することをおすすめしたい。AI業界に転職するのにも役立つはずだ。
AIに関連する資格は以下の通り。
G(ジェネラリスト)検定
「ディープランニングについての基礎的な知識を持ち、その知識を事業に活用できる人材の育成」を目的とする検定だ。
取得することでディープランニングに関する知識を利用して事業へ応用するスキルを持っていることの証明になる。
出題される範囲は機械学習やディープランニングの知識に加え、AIの歴史や法律、倫理など。
合格率は約60~70%となっている。
E資格
エンジニア向けの資格で、ディープランニングを実装するための知識やスキルが問われる資格だ。AIに関するエンジニアとしてキャリアアップを考えている人におすすめ。
合格率は約60~70%となっているが、事前に認定プログラムの受講が必要で、出題が100問に対して試験時間が120分と難易度は高めの設定になっている。
Ai人材検定 for Business / Engineer
2021年にできたばかりの資格で、現代に求められる最先端の知識、スキルを習得・確認できる資格だ。
主にAI初心者のビジネスパーソン向けの「for Business」とエンジニア向けの「for Engineer」に分類される。
統計検定
統計質保証推進協会が主催する統計に関する知識、活用力を身につけることを証明できる資格。
統計質保証推進協会は、統計制度、統計調査、統計情報、統計教育など、統計に関するあらゆる調査や研究を行い、後進の育成に力を入れている組織である。
データサイエンティストに携わりたい方におすすめの資格だ。
上流工程にも関わる
プログラマーの仕事はプログラミングだ。しかし、SE(システムエンジニア)が行うように、顧客から要件を聞き出し、基本設計を行う上流工程にも携わりたい。
なぜなら、下流工程ほどAIに取って代わられる可能性が高いからだ。
要件を的確にくみ取り、設計することはAIにはまだまだ難しい。今後のキャリアを考えても、上流工程に携わることは重要になる。
AIを作る側に回る
AIを開発・運用するプログラマーになることも一つの手段といえるだろう。
AIはあらゆる分野で必要になっており、需要が高くなってきているからだ。AIに対する知識があり、開発・運用ができるプログラマーは、仕事がなくなることはないと予想できる。
AIに仕事を奪われるかもしれないと心配するのではなく、AIを作る側に回れるようになろう。
AIエンジニアとは
AIエンジニアとはAIを使ったシステム開発を手掛ける技術者のことだ。機械学習やディープランニングを活用しながら、データの学習や分析を行い、最適なAIを構築するのが主な仕事である。
今後も多様な業界で、医療や製造業でも需要が増えていくだろう。
AIエンジニアの将来性
需要は右肩上がりで、世界的にも不足しているといわれるほどだ。日本でもAIエンジニアの需要を満たそうとしており、課題としている。
現時点では、AIとは無関係なSEやプログラマーも不足しているなか、高度な知識やスキルが求められるAIエンジニアの需要はうなぎのぼりの状況だ。
また、AIエンジニアの平均的な年収は650万円前後といわれているが、平均年収は上がり続けており、年収の上昇は長らく続くと予想されている。
AIエンジニアはやめておいたほうがよい?
非常に需要があり未来も明るいAIエンジニアだが、否定する声もある。その理由について説明しよう。
技術的な要求が高い
理由の一つ目は、AIエンジニアが求められる技術的なハードルが高く、簡単に目指せるものではない。
AIはディープランニングという機械学習をさせるのだが、その構造は非常に複雑になっている。
最初にAIを学ぼうとするとプログラミング、データ処理構造、IT知識、法規などさまざまな知識を学ばなくてはならない。
業務内容がハード
AIエンジニアは常に最新技術の勉強をし続け、自分の業務に適応させなければならない。
また、供給が需要に追い付いていないため、ほかの業種よりきつく感じられるだろう。
AIエンジニアになるには
AI開発で必要とされるPythonなどのプログラミング言語の習得やIoTの知識など、高い専門性を求められる。
新卒でAIエンジニアを目指す場合、情報科学系の大学や大学院に入学して専門知識を身につけよう。卒業後、大学院や研究室に進み、専門技術や最新理論の研究を経て博士号を取得することが可能だ。
社会人の場合、関連のスクールで学ぶケースが多く見られる。統計や機械学習について教えてくれる教育事業者は増えており、転職サポートも充実している。
さらに数は少ないが、AIを積極的に活用する企業が未経験者でもポテンシャルを見込んで採用するところもあるそうだ。
AIエンジニアを目指すには基礎的なスキルや知識を身につける勉強から始めて、既存のAI技術を駆使して開発する能力を身につけよう。
AIが進化してもプログラマーは無くならない
プログラマーがAIによって仕事を奪われるのかという疑問について、エンジニアが使うシステム表現の仕方が変わるかもしれないが、変わるだけで奪われることはないといえる。
人が使いたいものをAIに指示して作る課程がしばらく続くと思われ、その後は中身のアップデートや人が使いやすいUIなども追求されるであろう。
ただし、最初は人が判断する必要があり、人の役割はAIの非合理性を調整することになる。
しかし、人にはそれを選ぶ能力がたらない人が多いので、それを選んで提供するという仕事が生まれる可能性がある。
プログラマーの仕事がなくなるわけではなく、変化していくだけだ。